あたしが20年ほど前に小さな居酒屋をしていた頃の人気メニュー。
お母さんの玉子焼き。
25歳くらいのあたしは
料理が別に得意とかではなくて
その時勤めていた従業員がブッチしてある日来なくなった時から
ひとりでお店をやらなければいけなくなった。
困ったけれど
なんとかしなきゃいけない。
お客さんに言われて玉子焼きを焼いてみた。
そのお客さんは料理人さんで
あたしに「食べてごらん」とひとくちくれた。
それはもうしょっぱくて…
玉子焼きの作り方なんかちゃんと知らなかったもんだから。
それから試行錯誤して
この玉子焼きにたどり着いた。
お母さんの玉子焼きと言っても
あたしにとっての母の味とかではない。
うちの母が作る玉子焼きはしょっぱくてぺちゃんこでパサパサだった。
当時、本を読むのが好きだったあたしは
本によく描写される
「甘くてふわふわのお母さんの玉子焼き」に憧れていたのだ。
だからあたしが作る玉子焼きはふわふわで甘い。
永遠の憧れだったお母さんの玉子焼き。
25歳独身だったあたしはせっせと焼いていた。
懐かしい
懐かしい思い出。
本物のお母さんになっちゃったけど
久しぶりに焼いてみて
そんなことを思い出した。